[ インタビュー ]民生委員の役割とは何か?生活保護受給者の調査・通報・監視役!?

生活保護受給者は民生委員に監視されるって本当?

右肩上がりで増えている生活保護費受給者。

生活保護費を受給する生活の中で、関わるのが「民生委員」「ケースワーカー」です。役所の職員として業務で関わっているケースワーカーに比べ、民生委員は同じ地域に住んでいる住人のため「身近な相談役」であると同時に「監視されている?」と言われることも。

実際のところ、民生委員さんとはどんな存在で、どこまで関わるものなのか、民生委員経験者にお話を伺いました。

民生委員さんに訪問して直接聞いてみた

普段生活していて、民生委員さんは名前を聞くけれど接触がない存在でした。そもそもどこにいるのだろう?と思い、新築ではない家(=居住年数が長そう)の方に「この辺りで民生委員をされている方はどちらにお住まいですか?」と尋ねると、ほとんどの方がご存知でした。町内活動と密接な関係があるようです。

「親しげ」という軽い印象ではなく、どこか距離感は感じたのですが、一様に「突然訪問しても問題無い」ということでしたので、直接伺うことになりました。紹介されてお会いした民生委員さんは、人当たりが良く丁寧な対応ですが、言葉を選んでいる様子が伺えました。きちんとした戸建てにお住まいで、手入れの行き届いた様子です。玄関での対応でしたが、突然の訪問に動揺する様子は無く、馴れている印象です。

民生委員プロフィール

加藤 等さん(仮名)

  • 性別:男性
  • 年齢:70代
  • 居住:神奈川県東部

※ 写真撮影は全てNGでした。本文中の写真はイメージで本人とは関係ありません。

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民生委員というのは、どうやって決まるんですか?
加藤さん
各町内会の会長・婦人部長・保護司で「世話人会」という民生委員を作る組織を編成し、適任者を選出してお願いするんです。
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適任者の選定基準ってあるんですか?
加藤さん
特にないです。昔ならお金のある人がなって、困った人にお金を援助したりということもあったようなんですけどね。今は、「信用がある人」を300~400人所帯あたりに1人選ぶんです。

民生委員…正確には「民生委員・児童委員」という名称で、約20人で定例会や地域活動をボランティアでしています。主な活動は社会福祉協議会のボランティアですね。

社会福祉協議会…社会福祉に関する情報紹介組織、「生活福祉資金」の貸し付けや福祉の支援についての相談窓口。半官半民の組織です。

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主な仕事として生活困窮者・お年寄りの見守りとのことでしたが、どういう経過で受けるんですか?
加藤さん
生活保護受給者の家庭や障害者の情報が役所からリストで配布され、年に1回連絡が入ります。民児協(民生委員・児童委員協議会)から「あなたの担当地区にこういう人がいます」という情報を得るんです。あとは、相談を受けたら包括支援センターにつなげます。「特養に入りたい」とか「お金に困ってる」とか。包括支援センターから行政や病院につながる感じですね。
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地域の情報を上げるのがお仕事なんですね
加藤さん
この4月に民生マニュアルが出るんです。(と、民生委員の手帳を取り出す。)
民生委員法という法律があるのですが、守秘義務があるので情報は知っていても外に話すということはありません。ただ、我々の間で「民生委員は個人情報は関係無い」というのはモットーなんですよ。民生委員は厚生労働大臣に任命されるので、「報酬の無い公務員」なんて言うんです。包括支援センターに繋げるのが仕事で、民生委員自体に解決力無いんですけどね。

包括支援センター…介護保険法で定められた組織で、各市町村に設置されています。センターには保健師・主任ケアマネージャー・社会福祉士が置かれる他、外部委託も可能です。

取材した地域では社会福祉士・保健師・助産師・保育士・心理士の合同カンファレンスが行われていたり、多数の専門職が存在し、連携が必須のため「特定の職が窓口」というよりは専門家が集積している「センター」という機能になっています。

各職の例としては

  • 「保健師」は地域の皆さんの健康(心身共に)を守り、増進するために働く
  • 「社会福祉士」は、社会資源を使いながら、地域の皆さんが住みよくなるために働く
  • 「ケアマネージャー」は、心身に不調を抱えている人が地域で生活するためにどんなケアがあればいいのかをマネージメントする

など縦割であり、仕事はそれぞれの職場や役所でしているので、どうしても地域で住んでいる人の実状が見えない中での対応になるという部分があります。その時に、民生委員さんやボランティアさんと繋がって地域の情報を得るため、「地域住民の情報窓口は民生委員」という実情があります。

つまり、「支援が必要である」という証明は、本人ベースだけではなく民生委員の意見が影響するとも言えるのです。

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「繋げる」というのは、何かあったその都度ですか?
加藤さん
生活保護については年に一回ケースワーカと民生委員とでお話します。その時に、生活保護受給者について「鬱がある」「経済が困窮している」「老齢」「障害がある」などの情報をやりとりしますが、家の方に直接伺うのは「何かあった時」という感じで、把握しておくけど特に無ければ何もしないという感じですかね。民生委員がちょくちょく伺うと、生活保護の人に嫌がられますからね。保護費の受給開始連絡・停止連絡は都度来ます。引っ越してきた、引っ越していったなどの転入転出については、年に一度なので、年度途中というのは「知らないうちに」というのもでてくるんですよ。
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情報は具体的にどんな感じなんですか?
加藤さん
名前のリストで、家族構成や症状が全部書いてあります。
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地域の障害者を全部把握されているんですか?
加藤さん
生活保護を受けてる障害者ですね。生活保護を受ける人はほとんど障害があるか病気か老齢か母子家庭ですから。民生委員は協議会で「児童」「障害者」「高齢者」で福祉部会が分かれているんですわ。
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具体的に行かれたケースってありますか?
加藤さん
自己破産が出たと聞いた時は行きました。自己破産したことで大家さんから追い出されたいうので、行政に取り合って引っ越しの間を取り持ったんですよ。サポートですね。ほら、持ち家持ってるとそこから財産整理しなきゃないからさ。線路向こうに引っ越していったよ。
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民生委員さんだということで、生活保護受給者なのに贅沢品持ってるとか耳に入れてくる方はいるんじゃないですか?
加藤さん
民生委員は個人情報入ってるけど、言わないよ。噂で知っていても黙って聞いておく。「派手だね」っていう程度の情報は入ってくるよ。民生委員同士でも情報共有って無いな…民児協ではある。対外的にはナシ。ケースワーカーにはなんとなくね。余計なこと言っちゃいけないんだよ。民生委員法っていうのがあって、それにのっとって活動してるからさ。相談はウエルカム。生活が大変だっていう人の相談受けて、包括支援センターに繋げるのが民生委員だから。生活保護を受けるのに、預金が20万以下でないといけないとか色々条件あんだよ。民生委員は地域の身近な情報伝達役として、お金・健康の情報を行政に繋ぐ感じかな。岡山で民生委員が始まった時には、お金持ちがなってたからお金貸していたりしたんだけど、今はそんな力持ってないからさ。

民生委員の原形は、岡山県の済世顧問制度(さいせいこもんせいど)というもので、大正6(1917)年5月12日当時の県知事がドイツの救貧委員制度を参考に始めたそうです。

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民生委員さんは「繋ぐ」人なんですね。
加藤さん
ネットワークを作って行政に繋ぐサポート。任期3年75歳定年。けど、なり手がいないので、定年を77歳まで延長しようかっていう話も出てる。普段から地域に溶け込むために、地域のお祭りや学校関係にも関わっていく。主任児童委員とかね。何丁目の何番地が生活保護ってわかってるけど、一般の人には言わない。資料にも「○秘」って書いてある。あとは、高齢者のひきこもり防止やイベントの協力名簿に入ってて、子育てサロンやデイサービスなんかにも関わってる。社会福祉協議会のイベントボランティアとして組織で動くことがメインで、個別の事例に遭遇することってほとんど無いよね。

民生委員さんは、普段は地域活動に参加して「見守り役」として相談が来るのを待つ存在のようです。担当している地区が、貧困やトラブルの少ない地域では特に個別で動くケースはほとんど無く、隣接の民生委員さんと情報交換や連携をしながら地域活動をしていました。

民生委員さんは守秘義務があり「監視者」ではない

民生委員さんと話していて感じたのは、公務員として守秘義務があり、喋る情報については言葉を慎重に選んでいる様子でした。困窮者を見守る中で、自分から出向くようなことはほとんどなく、様子も監視するのではなく噂の度が過ぎると訪問だそうです。

事象の解決力は持たないため、ケースワーカーや包括支援センターに繋げる役目です。
「見守り」であって「監視ではない」ということでした。

噂を流す監視者、「世間の目」ってなんでしょう?

民生員さんは、守秘義務があるため「決して噂の出所にならない」ことがわかりました。では、民生委員さんを訪問に向かわせる「噂」はどこから出ているのでしょうか?

生活保護費受給者は通院している場合が多く、バスの乗降や病院や薬局の窓口で受給者証を提示します。その時に、周囲にいた人たちに普通の人が出さないものを出している様子が目に触れ、生活保護受給者とバレる可能性があります。仮にバレただけでは特に何の不利益もないのですが、生活保護受給者であるという前提で見られながら暮らすことになります。

すると、生活保護で暮らしているのに…不相応ではないか?という話が持ち上がります。
例えば「服装が身綺麗である」「持っている鞄が高級である」「車に乗っている」「母子家庭のはずなのに男性が出入りしている」…など、身につけている物や生活をあれこれ詮索され、それらの真偽を確認するために、民生委員さんやワーカーさんが訪問することになります。

「世間の目」とはまさに「周囲の見ている人たち」であり、生活保護費を受給する容認のラインというのが「納税者の持っていないものをナゼ持てる?」という部分に起因していると感じました。

生活保護受給は周囲にバレる?生活保護受給者の実情

周囲に「生活保護費で暮らしているのだから」という目で見られるということは、普通生活の人は持てずにいるもの(我慢しているもの)は「贅沢品」という視点にならざるを得ません。もともとの国民の思想に加え、長らくの不況で「余裕で税金を払っている」「満ち足りていて、充足している」という人がいない現状も、見る目が厳しい理由かもしれません。

受給者証を出す際に、知人の目に触れず隠したくても、交通費に余裕がなければ近くの病院を指定せざるを得なくなります。生活保護費での生活は、決して楽に暮らせるものではないと再確認する結果になりました。


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